早春の大糸線の旅

 3月21日、三連休の最終日、春を迎えたばかりのJR大糸線に乗ってきました。

大糸線は長野県の松本駅から新潟県糸魚川駅までを結ぶ地方交通線です。

途中の南小谷駅を境に北側はJR西日本、南側はJR東日本の路線になっています。

北側は風光明媚な姫川の渓谷を走り、南側は北アルプスを間近に眺めながら

仁科三湖の畔と安曇野を走る、車窓が自然豊かなローカル線ですが、

それは同時に沿線人口の少なさという問題を抱えています。

つい最近にも、JR西日本が存続に向けての協議を開始するという報道が

あったばかりであり、鉄道ファンとしては将来が気になるところです。

ちょうど雪融けの季節を迎え、この時季の山々は美しいだろうなと思い、

一日で全線を乗り通すために朝早く新幹線に飛び乗ったのでした。

 まずは北陸新幹線の始発で糸魚川駅へ。途中の上越妙高駅付近では

これまたきれいに雪化粧をした妙高山を見ることができました。

 糸魚川駅から乗った大糸線の列車は単行のディーゼルカー。朝の早い列車で

ありながら、18きっぷシーズンということもあるのかそこそこの乗車率に

なっており、立ち客も出るほどでした。

この日は天候も穏やかで、まだ多くの雪を抱える姫川の渓谷は雪が日光を

反射して明るく、雪融け水が流れ込んだ姫川の水は清らかで水量も多く、

最高のロケーションとなっていました。

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雪融け水を運ぶ姫川の流れに沿って走る

 糸魚川駅から1時間ほどで南小谷駅に到着。ここからはJR東日本

「電車」に乗り継ぎます。南小谷駅で下車する乗客も多かったため、

こちらは空席の多い状態で発車しました。

 途中の白馬駅に到着すると観光客が大勢乗車し、車内は一気に混雑しました。

この時季ですとやはりスキーでしょうか。一時ほどのブームはないにせよ、

白馬・八方尾根はスキーの名所として有名ですからね。

 列車は南神城駅を過ぎると「仁科三湖」と呼ばれる3つの湖の畔を走ります。

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青木湖

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中綱湖

 青木湖、中綱湖と進み、最後の木崎湖の北側にある海ノ口駅で途中下車

しました。この駅で降りたのは景色がよいこともありましたが、アニメの

聖地巡礼」という目的もありました。実はこの木崎湖、オリジナルアニメ

おねがい☆ティーチャー」「あの夏で待ってる」の舞台になっていたのです。

私は世代的に「あの夏で待ってる」(なつまち)なんですけどね。

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昭和の雰囲気が残る海ノ口駅で途中下車

 駅前で「なつまち」のアニメシーンのカットを意識して記念撮影しました。

 一日1本だけやってくる大糸線直通の特急あずさの通過時間にちょうど

当たっていたので、駅の近くの田んぼで撮影。やってくる列車のほとんどが

2連の普通列車である大糸線において、9連の特急列車の存在感は圧倒的です。

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海ノ口駅付近を通過する特急あずさ5号、南小谷行き

 しばらく列車が来ないので、徒歩で湖畔を進み木崎湖の南側へ。

木崎湖の面積は1.4 k㎡で小さいとはいえませんが、1時間もあれば反対側まで

歩いて行くことができます。

冬を越したばかりの湖は特に水が透き通っており、雪融け水も流れ込むために

大変清らかな姿を見せてくれます。

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美しき早春の木崎湖

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木崎湖の南側の湖畔から

 木崎湖から信濃木崎駅まで歩き(時間ギリギリになったため実際は全力疾走)

次の普通列車に乗って信濃大町駅へ。この間でも雪が残った北アルプス

山々を望むことができました。

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雪化粧の北アルプスを眺めながら走る

 信濃大町駅立山黒部アルペンルートの長野県側の拠点になっています。

ただし立山黒部アルペンルートの開通は5月連休前なので、3月のこの時期は

ガランとしていました。

 駅前の食堂で名物という「黒部ダムカレー」を食べた後、

次の普通列車で終点の松本駅を目指します。白馬からの接続が無い列車だった

ためか車内はガラガラで、終点までゆっくり座っていくことができました。

ロングシートの車両でしたが、東側のシートに座れば目の前の車窓に雄大

北アルプスの山脈が広がります。観光路線として人気があるのも頷けます。

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正面に北アルプスを望みながら安曇野を往く

 松本駅からは篠ノ井線の特急しなのに乗り継ぎ、長野駅経由で帰路に

つきました。あれ?松本から関東に帰るのなら特急あずさじゃないの?と

思われる方もいるでしょうが、意外にも松本~東京は直通の「中央本線ルート」

長野駅経由の「篠ノ井線北陸新幹線ルート」とでは所要時間に大差はなく、

埼玉県以北であればほぼ確実に「篠ノ井線北陸新幹線ルート」の方が早く

着きます。しかも乗り継ぎ割引が適用されるので、特急しなのの特急料金は

半額になり、価格差もさほど大きくありません。

 終点の長野駅では数分の乗り継ぎ時間で北陸新幹線最速種別の「かがやき」に

接続。わずか1時間で大宮駅まで運んでくれました。ただし三連休の最終日の

夕方ということで上りの新幹線は満席であり、やむなく立席特急券での乗車に

なってしまいましたが、1時間で着くのなら耐えられますね。

 駆け足気味ではありましたが、まだ雪が残る早春の大糸線を満喫することが

できました。山や湖が好きな人であれば、乗って車窓を眺めるだけでも

楽しむことができる、本当にステキな路線だと思います。