保守とリベラル

今回の解散総選挙で一番違和感を感じたのが、やたらと「リベラル」という

単語が飛び交ったことですね。

さらに若い世代を中心にマスコミ・年配層との間で

「リベラル」の認識に違いがあることも鮮明になってきました。

 

そもそもリベラルという単語を辞書で引けば自由主義、いわゆる大きな政府

のような意味で出てくるわけで、

経済・金融への積極的介入、労働条件の改善、社会保障充実、集団的自衛権などを

主に進める…あれ、今の自民党がやっていることそのものじゃないですか。

つまり辞書的な意味で言えば、今の若者の認識の方が正しいわけですね。

 

ところが、日本では戦後まもなくこれに国体の在り方についての

イデオロギー闘争が加わったことで、

自民党=保守」

共産党社会党民主党の流れを組む政党=リベラル」ということになり、

古くからの政局好き(特にマスコミ)はいまだにこの固定観念

凝り固まっているようです。むしろ常識レベルだと思ってるっぽい。

 

なぜ自民党が保守とされたかといえば、もともと自民党憲法改正

もっといえば戦前の憲法を軸にした復古的な案に改正することを目的に

結党されたからです。つまり結党時点では確かに「保守」なのですね。

となるとその対立軸は「リベラル」…(この辺りから何かおかしいような?)

しかし結局、70年間も憲法改正の発議には至らず、そのうちに日本国内では

成長の歪みともいえる社会問題が顕在化し始め、政権与党である自民党

そちらへの対策にかかりきりとなってしまいます。

嫌でも対策とらないと次の選挙で負けちゃいますもんね。

社会問題に積極介入するのは本来「リベラル」の役目なんですが、

こういう、信条より現実を優先して協力するのが日本らしいというか…

 

結果として自民党は保守からリベラルまでを広く手がけ、

時代に合わせて政策を変えていく現実路線政党になったわけです。

まあ、こうなってしまうと政党というより「元老院」といった感じですな。

 

一方、与党が政権を譲らずに政策を現実的に変えていかれると

一番困るのが野党です。

その時々の民意を与党が吸い上げていくのですから、

本来担当であるはずの経済や社会保障、労働問題では出る幕がない。

せいぜい揚げ足取りが精いっぱいでしょう。

そこでターゲットを絞ったのが国民のトラウマである「戦争」を想起させ、

不安を煽ること。(むしろそこしか攻め所がない)

その先頭に立ったのが共産党社会党~で、援護したのが一部マスコミ。

幸い、戦後日本は自衛隊在日米軍があって、たまたま戦争に巻き込まれなかった

だけなのですが、これを憲法9条のお陰だと洗脳する。

常識的に考えて、侵略国がわざわざ相手国の国内法なんて気にするわけが

ないのですが、それが一定の支持を得てしまったのが日本の恐ろしいところ。

結果、「野党(共産・社会党系)=リベラル=憲法改正反対・自民政権反対」

という不思議な等式ができてしまったわけ。

4年前に第2次安倍内閣が発足して以来、野党に遠慮してなおざりになっていた

安全保障関連の法律が次々に通過し、彼らは急な変化に困惑しているのでしょう。

最近はなりふり構わない言動が目立つようになり、呆れた目で見られていることにも

気付かないようです。

今回の某選挙特番で「リベラル=サヨクと呼ばれたくない人たちの自称」と揶揄されて

お茶を噴いた人もいたのでは。

 

日本国憲法が施行されて70年、東西冷戦が終わって30年。

もうイデオロギーの闘争として政局を見るのは頭が古すぎるでしょうね。

ただし日本の場合は、現実路線か、そうでないかという、どう見ても一択しか

ないのが現状というのが問題ですね。